敷地は2016年に区画整理が⾏われ、斜面緑地を切り崩してできた新たな住宅地で、その区画の中の一つの敷地で住宅の設計をおこなった。
コンクリートの擁壁で囲われた敷地周辺は、唐突に人工物が自然中に入り込んだ異様な景色であったが、擁壁上に広がる緑地帯は相当な樹齢を重ねた大きなケヤキや桜からなる壮観な景色であった。
そこで、コンクリートの擁壁も含め、この崖の景色がこの土地のポテンシャルであり、今後この緑地帯が開発される可能性は極めて低いことから、この風景を住宅に取り込むことを考えた。
擁壁の強度やがけの勾配も十分に安全性を確認できたので、崖に向かって大きな開口部を設け、崖とその上の形式を借景としてとりこむこととした。
建物は天井高さが最大5.5mのリビング・ダイニングと、3階建てに積み重ねた、水回り・寝室・子供部屋の 2 つのゾーンから成る。
リビング側の外壁をわずかに湾曲させ、隣地の建物や道路からの視線を遮りながら、家の中から擁壁とその上の緑地帯、空までの大きなつながりが感じられるようにした。
細長い洞窟のような空間の先に、どこにもない特別な景色が広がる住宅である。
住宅/神奈川県横浜市
Use : house
Building site : yokohama,kanagawa
Total floor area :98㎡
Photo : Koji Fujii/TOREAL